Watercres Baseというキーボードを設計した話。

こんにちは、フェンネルです。

普段はKiCadやFusion360なんかでキーボードを設計して遊んでます。

 

今回Watercress Baseというキーボード基"盤"を設計したので紹介します。

 

あえて基盤というワードを使ったのは、Watercress Bassという名前はキーボードそのものの名前ではなく、キットの名前と言いますか、総合パッケージの名前であるという理由からです。

 

とかなんとかごたごた言っていてもしょうがないので詳細な説明をしていきます。

 

~目次~

 

はじめに

 

事の発端は年総括ブログの執筆中に思いついたアイデアでした。

 

"自キ活一年目でやったこと"ブログより引用

 

まあ概ねこれの通りなものを設計しようとして設計した~ということです。

これと似たことができるキーボードキットで有名なのはCorne Cherry Lightなどが挙げられるでしょうか。

 

遊舎工房より引用

 

舎で販売されているCorne Cherry Lightは左右端を一列づつ切ることができるみたいです。

 

ここで私が設計しているキーボードの名前の付け方の説明なのですが(唐突)、レイアウトがほとんど同じものには同じ名前をつけて、特徴が大きく変わるものは別な名前をつけています。(ex. Watercress→[分割/Coleus],[Grin/Aromaticus])

ということでWatercressシリーズがいっぱいあるならキーをいくつか増やしたり減らしたりすれば作り変えれるんじゃないかとおもいまして、遊んでみることとしたわけです。

 

設計

 

とりあえずまずは回路図を貼ります。

回路図

解像度が低くて申し訳ないです。

回路図ですが、これ自体は単純な総当たりマトリクスの基板です。左のマイコンの下にあるのはI/O Expander(PCF8574N)です。

 

んでこれに色をつけたのがこれです。

私が"ベン図"と呼ぶもの

 

上のベン図を考えるのにかなり苦労しました。(I/O Expanderを使ってる都合上、その置き場と使うピンを考えると上のようなものになりました。)

これらの色とキーは下のレイアウト図に対応しています。

レイアウト図

 

アローキー付近は45と57はチラ見えしてる右側のShiftとCtrlを選択できて、50になるとその2キーが無くなってアローキーに置き換わります。

 

ベン図改

全キー頑張って書き込むとこんな感じです。(書き足してるのでところどころフォントが違う)

 

基板の画も貼っておきます。

 

基板の画

切る位置によってUSBの差口を変えられるようにXiao RP2040のフットプリントが複製してあります。

LEDはありません。(配線がつらいので)

 

(いないと思いますが)似たものを設計する時には"切っても残る場所"に気をつけて考えると設計がスムーズに行きます。

当たり前の話ですが、複数レイアウトのうちで選択したものの中に存在するレイアウトの存在する土地は使えるという話です。(例えば45のなかに37は入ってるし、50の中にも一部は45と被っています。)

目的の位置に行くまでの道もこれを考慮しなくてはならないので、オートルーターなんかは使えないですね。

ピンを他で補ったり、左右通信なんかでジャックを使ってジャンパーするときにはこれらを考慮して部品や配線の配置をする必要があります。

 

技術的に面白いことは多分もうあんまりないのでレイアウトの説明に移ります。

 

内包するキーボードのざっくり説明

 

選択可能なキーボードを特徴と一緒にまとめて示します。

 

Watercress37

レイアウト図

割当キーは適当です。

37はいわゆるQAZ配列と言うやつで、40%(とここでは言います)の中ではトップクラスに可愛い配列だと思います。

使いこなすのはかなり大変そうですが、いつか手にしてみたいキーボードです。

 

Watercress45

レイアウト図

割当キーは(ry

45はそれ単体で作ってたりもしますが、Watercress Baseでも選択できるようになってます。

45無印との違いは、左右下端が1Uになっています。(このことからWatercress Base版の45はWatercress45 TypeBと呼んでたりします)

45は、私が初めて自分で設計したキーボードでもあり、Jones配列を踏襲した12行の使いやすい40%キーボードになっています。

 

Watercress50

レイアウト図

50は45の右下をアローキーに置き換えて端っこに3キーを追加したものです。

元は上図のPgdnがなく、49でした。

40%キーボードを使用していてもアローキーがあると何かと便利ですし、見た目も可愛くなります。(私は)あまり使用しない右ShiftとCtrlキーの場所を有効活用できるのもいいですね。

 

Watercress57

レイアウト図

57です。

40%を使っていてもテンキーを使いたくなるときってありませんか?ありますよね?そう、あるんですよ。(40%にプラスでテンキーやマクロパットを使うくらいなら60%やなんかを使え派もいますが(見た目が可愛いから良いのです。))

45に単純にテンキーを追加したバージョンとなっており、昔あったCandyBarのように左側にテンキーが追加される形です。

 

Watercress72

レイアウト図

72です。

割t(ry

50をそのまま右側に拡張してテンキーとし、Fキーとロータリーエンコーダーを追加したレイアウトになります。

Fキーは数字キーに割り当てればそう使えるので、40%版の1800レイアウトのような......60%の一部がテンキーになったような......そんな不思議なレイアウトです。

とにかく可愛いですよね。ゴテゴテに飾った40%はゴスロリのような萌感があります(?)

 

ちなみにWatercress Baseは基板を切り取らずに使うこともできるので、「72に57の左テンキーを追加したい」といった変態的なレイアウトにも対応できます。もはやそれは何%なんでしょうね。

 

過去の諦念と今後の改善(した)

 

実は上に示した基板の画やレイアウト図は過去のものでして(え??)、現在はいろいろと仕様が変更されています。(実はこの記事を書いている途中に変えたくなっていろいろやっちゃったんですよね。(だから投稿が遅れたんですね~))

I/O Expanderの扱いがかなりめんどくさいということを受けてマイコンを変更、それに合わせてレイアウトも変わっていった、といった流れです。

 

回路図

 

Picoになりました。ピンとマトリクス自体は変わっていないので、配線を全部やり直すだけで済みました(それに12時間くらいかかったわけですが)。

 

レイアウト図

レイアウトも少々変更です。

57の左テンキーは少し離れて打ち間違いが少なくなり、72のFキーとαキーのベゼルが広がったことで全体のバランスが整って可愛くなりました(親目線)。

 

基板の画

ついでに基板です。左上のロゴ部分は唯一角Rがついており、ドリル穴もあるので切り取ってキーホルダーにできます(いらんよ)。

Picoの使わないピンのTHをフットプリントから取り除くことで、前バージョンではできなかった、フルキーホットスワップ対応が実現しました。Picoの基板上の専有面積を減らせたことと、曲線配線を取り入れたことで前バージョンに比べれば、比較的綺麗な基板になったんじゃないかと思います(72にしか使わないピンを隔離できたことも大きい)。

前バージョン設計時と比べてKiCadも私もアップデートできているので(無事に動いてくれればですが)、満足のいく設計ができたと思います。

 

おわりに

ここまで読んでいただきありがとうございました!

以上"Watercress Baseというキーボードを設計した話"でした。

このキーボード並びに私が設計するキーボードの殆どは実際に発注できておらず、この設計で実際に動くという確証はないです。

しかし(理由は大抵明確ですが)他の人があまりやったことのないキーボード設計を、自分なりにいろいろ考えながらやってみるのが楽しくて、ここ2年ほど自作キーボード温泉でのぼせてます。

今後も(やる気と記憶があったら)、こんな感じでやったことをまとめたブログを書いていこうと思います。

この記事への質問や誤字があったらTwitterで言っていただけるとありがたいです。

重ねてになりますが、本当にここまで内容のあんまりないブログを読んでいただきありがとうございました。

みなさんも楽しい自キーライフを!

 

このブログはZoom65で書きました。